小説のアイデアはどうしたら見つけることができるのでしょうか?
ブレインストーミングでアイデアを見つける方法があります。身の回りにある物からでも面白いアイデアを出すことができる方法です。
身の回りには色々なものが無数にあるので、テーマを選ぶのに困りません。種類も雑多なので予期しない連想、発想が生まれることが期待できます。
今私が向かっているパソコンの周りだけでも、数十種類のものが散在しています。
普段見慣れた身近なものからでも、面白いアイデアを出すことができる方法を実践してみました。
身の回りにあった「鉛筆削り」のブレインストーミングを実践してみた
たまたま、私の眼の前にある鉛筆削りが目に入ったので、鉛筆削りをブレインストーミングのテーマに決めました。かなり前に100円ショップで買ったものです。
「鉛筆削り」という言葉を、マインドマップの中心に書き込みます。今回は「Freeplane」というマインドマップを使います。
マインドマップの「鉛筆削り」という文字と、鉛筆削りを手にとってしばらく眺めながら、何か頭の中に浮かんでくるのを待ちます。
「鉛筆削り」から連想した言葉
「回転する」
最初に浮かんだ言葉は「回転」でした。ハンドルを手で回しながら鉛筆を削る動作から連想されました。
最初「回転」と名詞にしようかと思いましたが、動詞の「回転する」と比較すると、「回転する」の方が他の言葉と結びつきやすいと考え、動詞の「回転する」に決めました。
「カス」
次に頭に浮かんだ言葉は「カス」です。これは鉛筆の削りカスが目に止まったからです。
「カス」なんて言葉は普段あまり出てきません。ブレインストーミングだから出てきた言葉です。
「透き通る」
鉛筆削りのボディがスケルトンなので連想しました。見たままですね。「透明」という言葉も同時に浮かびましたが、「透き通る」と形容詞の形の方を採用しました。他のことばと結び付きやすいと考えました。
「溜まっていく」
鉛筆の削りカスが下の受け皿に溜まっているのを見たままです。「溜まる」と動詞の形でも良いですね。今回は「溜まっていく」と進行形の形容詞の形を採用してみました。
「使い捨てられる」
この鉛筆削りもいずれは壊れて捨てられる運命です。名詞の形の「使い捨て」よりは、「使い捨てられる」と受け身の形容詞、動詞の形の方が悲劇的な展開の物語を予感させます。
「使いにくい」
この鉛筆削りは、ボディも小さく軽いので、ハンドルに力が入りづらく回しづらい面があります。
この言葉は他の言葉と組み合わさったら面白いアイデアが生まれるような魅力を感じます。
欠点を表現する言葉って魅力的ですね。
「期待はずれ」
この言葉も同様に惹かれる言葉です。私は負け組の言葉、弱者の言葉に惹かれます。
この鉛筆削りは、鈍角にしか削れないので、削った鉛筆の先の芯が短く、太いところから急に細くなってしまうので、直ぐにまた削らなければならないのです。この点が期待はずれでした。
「安物」
これも否定的な言葉です。100円か200円で買ったと思いますので、値段的な面から連想しました。
他の言葉と組み合わせる時は「安物の」とか「安い」とか変形して使うと思います。
「100円」
これは文字通り100円ショップで買ったことからの連想です。「100円」という言葉自体は他の言葉と組み合わせにくいので、「100円」から更に連想する第二段階で連想される言葉に期待します。
「肉体労働」
少し大げさですが、鉛筆削りを手で回しながら削る時の動作から連想しました。
この言葉も「100円」と同様、その先の第二段階の連想した言葉の方に期待が持てます。
「カツオ節」
これは鉛筆を削ったカスをみて連想しました。カツオ節のことを削り節とも呼ぶので、それにも影響されました。
この言葉も次の段階の連想の方が魅力的な言葉が出てきそうです。
「パズル」
これは鉛筆削りから直接の連想ではなくて、「鉛筆」から連想しました。
前によく「漢字パズル」にこっていた時期があり、よく鉛筆を使い、同時に鉛筆削りも頻繁に使ったからです。
「パズル」という言葉も謎を秘めていて、アイデアを出しやす言葉のような感じを受けます。
更に連想の段階を深めていく
第一段階の連想は12個が適当な数
第一段階に連想した言葉は12個出たところでやめました。前回の「目覚まし時計」の時もそうですが、12個ぐらいが適当に思えました。
第一段階をこれ以上増やすよりも、これらを元に第二段階の言葉にエネルギーを使った方が有効だと思います。
また、マインドマップのスペース的にも丁度見やすい数に思えます。
時間を置くと新たな連想が出てくる
第一段階の12個の言葉について、それぞれ連想されることばを追加していきます。
前回の反省から、名詞を多く出そうと思いました。そのせいか今回は形容詞が少なくなった印象です。
思いつく言葉を出し切ったと思っても、時間を少し置いてから再開すると、すんなり連想が浮かんだりしました。
第二段階どうしの言葉を組み合わせてみる
出尽くした第二段階の言葉をいろいろ組み合わせて、面白そうになる言葉の組み合わせを探します。この過程が一番楽しく感じます。
「繁盛店」x「残り物」:
繁盛店だから売り尽くしてしまいそうなのに、残り物とは意外な印象を受けます。「何が残ったのか?」「どうして残ったのか?」という疑問を抱く言葉の組み合わせです。
「英雄」x「正体」:
同じグループの言葉どうしの組み合わせですが、興味を惹かれる組み合わせに感じました。
「何か秘密を抱える英雄の正体とは?」英雄の裏の顔を暴くストーリーの予感がします。
「繁盛店」x「正体」も面白そうです。
「人間」x「自動販売機」:
SF的な世界が想像できます。人間が自動販売機の中に収まっていて、必要な人が買っていきます。
「奴隷」x「自動販売機」だと、また違った未来が想像できます。
「浄化される」x「労働者」:
これも近未来の世界です。強大化した権力の下で、虐げられて無力化した民衆、労働者が、支配者の都合の良い人間に浄化=改造される物語。
その中から抵抗するヒーローが生まれてきたら・・・・・・。
「長持ちしない」x「透明人間」:
短い時間しか透明でいられない透明人間。コメディの予感がします。
透明人間がドジをして、それがきっかけで女性と恋に落ちる物語かもしれません。
「考える」x「筋肉」:
発展した都市型生活では筋肉が退化します。衰えていくままの筋肉が反乱を起こします。
あるいは、頭でっかちで理論ばかりのエリート人間に対して、野性的で体で勝負する人間をヒーローに描く物語も想像できます。
「ヘルメット」x「香り」:
早くに妻をなくし、一人娘を育てるために、工事現場で働きつづけ、苦労ばかりで生涯を終えた父親。
そんな父親に冷たく当たってしまったことを後悔する娘の物語。父親を失って初めてわかる親の思い。
仏壇の前に置かれた父親が使っていたヘルメット。まだ父親の残した香りがします。
第一段階と第二段階の言葉を組み合わせてみる
今度は12個の第一段階の言葉と第二段階の言葉を組み合わせて、面白い言葉になるものはないか探してみます。
「奴隷」x「パズル」:
奴隷をチェスの駒のように扱って、対戦相手に奪われたら、その奴隷は殺されてしまうか、相手の兵士となって利用される。
これは古代の物語なのか、それとも遠い未来の世界なのでしょうか?
漫画の「カイジ」とか、韓国映画の「イカゲーム」(まだ観てないですが ^^;)のようなイメージを持ちます。
「使い捨てられる」x「英雄」:
英雄はもはや力を失ってしまいました。人々の英雄に対する期待は裏切られ、現実世界は苦しいままです。
英雄は次々と生まれては消費されていきます。人々はもう英雄に希望を託すことはありません。
「真の英雄とは何なのか?」新しい英雄像が生まれる物語です。
「100円」x「探偵」:
客の依頼がなく潰れそうな探偵事務所。年老いてどこも雇ってもらえそうにない老いた女性事務員(もしかしたら男の母親が手伝っているのかもしれません)と、パットしない独身の中年探偵の男。
給料も払えなくなった探偵は、100円ショップで買い物をした時にヒントを得て、100円で相談を受け付けることを思いつく。100円探偵の誕生です。
「使いにくい」x「カス野郎」:
亡くなった父親が営んでいた鉄鋼所を引き継いだ若い娘。そこへぶらっと訪れたバックパッカーの外国人青年。旅の資金稼ぎのためのアルバイトを探しているらしい。
娘は仕方なく働かせてみたが、青年は生意気で、その上言葉のやりとりも難しく使いにくい。
しかし、喧嘩ばかりしていた二人だったが、いつしか恋が芽生え・・・・・・。といったラブコメディです。
「生活」x「迷路」:
生活に追われて生きている私達は気がついていませんが、ちょっとよそ見をすると、出口のわからない迷路に入り込んでしまいます。
安心しきって暮らしていた夫婦に突然起こる危機。ささやかな幸せも簡単に崩れてしまう、といったシリアスな物語です。
「溜まっていく」x「ハサミ」:
ある日母親が、中学生の一人息子の部屋を掃除していると、不必要な数のハサミの入った箱を見つけます。
箱の中のハサミの数は日を追って増えていく。心配になった母親が息子に尋ねると、息子は「え、何のこと?」という返事です。
母親が箱を確かめようとしたが、部屋からは既に箱はなくなっていた・・・・・・。不気味なミステリーです。
「透き通る」x「嘘つき」:
若い天才詐欺師の男の話です。生まれつき相手の気持ちを共感できない性質の男は、罪悪感のない表情で人を騙していきます。
人を不幸にしても罪の意識を持たない男の前に現れたのは、男の幼児期と同じような振る舞いをする子供を持った若い母親。
貧しい母子家庭の様子を目にした男の心にある変化が・・・・・・。
ブレインストーミングでアイデアを出す方法を実践してみた感想
- 形容詞の言葉が少なくても組み合わせづらかったです。やはり、形容詞と名詞のバランスが大切だと感じました。
- 組み合わせに慣れてくると、組み合わせから物語の一場面が自然に想像できるように感じました。
- マインドマップに関しては、FreeplaneはXmindより使いにくく感じました。ノード(言葉の枝の部分)の配置や色使いがきれいでなく、全体を見渡す視認性に劣ると思います。
- 物語の種、物語の誕生は、言葉と言葉の結びつきだと感じました。まるで分子と分子が結合して新しい物資ができる化学反応のようです。