「自分の伝えたいことが、なかなか上手く表現できない」
「言いたいことを詰め込み過ぎて、ついついわかりにくい長い文になってしまう」
これが私の悩みです。
でも、「これだ!こういうことを知りたかった」という本に出会いました。本のタイトルは『R80自分の考えをパッと80字で論理的に書けるようになるメソッド』(中島博司著、飛鳥新社刊)です。
ルールも簡単で直ぐに取り入れることができます。私も本を読んでる途中から、早く文を書いてみたくなりました。
「R80」のルールはたった2つ
- 2文構成で80字以内。
- 2文目の最初に必ず接続詞を使う。
この2つのルールの表現の仕方は著者のものですが、わかりにくいかもしれないので、私が言い換えて表現してみます。
- 約40字の文を2つ合わせて80字以内で文を構成する。
- 約40字の文と文を接続詞でつないで一つの文を作る。
「約40字の文」+接続詞+「約40字の文」⇒80字の文
接続詞は厳密な意味の接続詞だけではなく、2つの文をつなぐ言葉という考え方で、2つの文を論理的につなぐ様々な言葉が使われます。
ルールだけではまだピンと来ないと思いますので、典型的な例を一つご紹介します。
「前から下調べをして楽しみにしていた修学旅行でしたが、私は不参加を決めました。なぜなら、数日前から咳が出始め、熱も高くなってきてインフルエンザの疑いがあるからです」
この文の構成は次のような論理的な関係で成り立っています。
「結論」+接続詞+「理由」
修学旅行には参加しないという前半の結論の文を、後半の文の理由によって参加しない根拠で支えています。つまり、結論という主張を、理由によって「証明」していると言えます。
このように、2つの文を接続詞でつないで論理的な文を作る例を、この本では豊富に紹介しているので趣旨は理解できるのですが、目的別の分類が厳密にされていないので、私は物足りなさを感じました。
「こういう例のように、こういう場合にはこういう形にしなさい」みたいな感じで説明が終わっているので、私は目的別に分類して理屈の上でも理解したくなりました。
ここから先は、私の理解に基づく「R80」メソッドの目的別の分類で、著書には書かれていません。
私の分類した「R80」メソッドの目的別分類
No. | 前半の文の要素 | 接続詞の例 | 後半の文の要素 | 文の目的 |
1 | 結論 | なぜなら、それは | 理由 | 結論の証明 |
2 | 結論候補 | しかし、ところが | 否定理由 | 結論候補の否定 |
3 | Aの特徴 | 一方 | Bの特徴 | 両者の比較 |
4 | 失敗 | だから、そのため | 改善 | 反省と改善 |
5 | 原因 | だから、そのため | 結果 | 原因の分析 |
6 | 全体(抽象) | 特に、例えば | 部分(具体) | 部分強調(具体化) |
7 | 部分A1 | また、さらに、 | 部分A2 | 追加強調(補足) |
8 | 目標・理想 | そのためには | 達成条件 | 目標と課題 |
目的別分類の具体例
分類した定義だけではわかりにくいので、次に例文を作ってみました。No.1の「結論の証明」は先程例を挙げましたので、No.2から例示します。
No.2「結論候補の否定」:
「咳が出て熱も高くなってきたので、インフルエンザかもしれないと医者に行きました。しかし、検査をしてみると結果は陰性で、インフルエンザではないことがわかりました」
結論とは決定していないことを、後から否定理由を示して否定する文になっています。
No.3「両者の比較」:
「今回診察を受けたA医院の担当医師は、笑顔で応対してくれて説明も丁寧でした。一方、去年インフルエンザの検査を受けたB病院の担当医師は、無愛想で事務的な対応でした」
2つの同類の事柄を比較して、両者の違いを示す文になっています。
No.4「反省と改善」:
「去年は大きな病院の方が良いと思って、規模が大きいB病院を選んで気分を悪くしました。だから、今回は小さいけれど近所の人に聞いて評判の良かったA医院にして正解でした」
失敗したことを反省して改善したことを示す文になっています。
No.5「原因の分析」:
「私には外見で人や物を評価してしまって、良く内容を調べずに判断する欠点があります。だから、評判など聞かずに建物の立派さだけでB病院を選んでしまったのもそのせいです」
原因があって、その結果がもたらされたと分析する文になっています。
No.6「部分強調(具体化)」:
「A医院は建物は小さく診療科目も少ないですが、どの医師も親切に対応してくれます。特にC先生は優しい笑顔で話しかけてくれて、とても丁寧に薬の説明をしていただきました」
最初に全体的な説明を抽象的に示して、後からある部分を具体的に詳しく説明して強調する文になっています。
No.7「追加強調(補足)」:
「A医院には、インフルエンザの検査を受けた時にとても親切に対応してくれたC先生がいます。また、近所の人に聞くとD先生も優しくて診察に時間をかけてくれると評判です」
全体を強化するために、部分を追加しながら補足していく文になっています。
No.8「目標と課題」:
「インフルエンザにかからない抵抗力のある体になりたいと痛感しました。そのためには、日頃の運動や偏りのない食事だけでなく、夜ふかしせずに十分睡眠をとる必要があります」
達成したい目標に対して、そのために必要な条件を示す文になっています。
R80メソッドの補足と感想
補足
R80のRはReflection(振り返り)とRestructure(再構築)の意味で著者が名付けたそうです。教育者であった著者が授業の後の学習の振り返りに、学んだことを自分なりに整理(再構築)して、80字の型の中にまとめさせる目的で考え出されたメソッドです。
2つの文をつなぐ接続詞ですが、配置する必要がない場合は省略しても良いと著者は説明しています。
どんな長文でも、R80メソッドを応用すれば(80字単位で、序論、本論、結論などの構成を組み立てれば)可能だと説明しています。
また著者によれば、R80メソッドを使えば、質問やプレゼン、スピーチなどの対話力の向上にも効果があるそうです。
私の感想
- 重要なのは、前後2つの文のそれぞれに役割を与え、論理的な主張を小さな文の単位で実現できることです。従って、文字数に固執する必要はなく、前後の文の論理関係を成立させることに主眼を置けば良いと思います。
- 私は、本に書かれていた例文を8つの目的別分類に分けましたが、それ以上の用例はあるはずなので、自分なりの新たな目的をもった使い方(型)を発見できると思います。