小説を書く基礎5「一枚の写真から物語の一つの場面を想像する方法」を実践してみた

小説の全体の構成を考えるのは難しいですよね?

でも、少しは物語を創造する楽しみを味わっみたいです。

自由気ままに一つの場面だけを想像することなら簡単にできます。後先の話の展開など考えずに、写真から一つの場面を想像する方法です。

素材の写真なら直ぐに手に入るし、写真なら行ったこともない外国でも、ありえない状況でも目の前に用意することができます。

写真から場面を想像する修行を実践してみると、登場人物たちが動き回るのを眺めているような体験がありました。

一枚の写真から物語の一つの場面を想像する方法を実践してみた

一枚の写真から物語の一つの場面を想像する方法を実践してみた

5歳ぐらいの外国の幼い少年が、大きな瞳でこちらを見上げています。

少し驚いているようにも見えますし、誰か知ってる人の怪しい振る舞いに、戸惑っているようにも見えます。

このたった一枚の写真から、果たしてどんな場面を想像できるでしょうか?

家族とピクニックに訪れた少年

少年はこの日、家族と草原や森のあるところに車でピクニックにやってきていた。

両親が食事の準備をしている間、少年は近くの森の方へ遊びに行くことにした。

「ジョン、もう直ぐご飯だから遠くへ行かないで!」

大きな木の下の草の上に敷物を広げていた母親は少年に呼びかけた。

「うん」

少年は大きな声で答えたが、母親の方へは振り返らずに、森の方へ駆け出していた。

少年の家族

母親は少年の後ろ姿を見つめていたが、広げた敷物を平らに整え始めた。

敷物の反対側を、娘のヘレンが持って手伝っている。

「直ぐに怖くなって帰ってくるわよ、ジョン」

ヘレンの言葉を聞きながら、母親は森の方を見ていた。

「お父さん遅いね」

ヘレンはそう言うと、敷物の上に足を伸ばした。

「きっと、魚が釣れないのよ」

母親は谷川の方に顔を向けると、眩しそうに額に手をかざした。

「ジョンもお父さんと一緒に行けばよかったのにね」

ヘレンは寝そべって青い空を見上げた。

「ジョンは魚より虫や蝶が好きなのよ。魚のぬるっとしたのが気持ち悪いんですって。虫だって気持ち悪いのにね」

二人は顔を見合わせて笑った。

神聖なブナの大木

その頃、ジョンは森の中にいた。

この森は何度も来たことがある。でも、いつもジョンは初めて訪れたように、あたりを伺いながらゆっくり歩いた。

ジョンにとってこの森は神聖な場所だった。お化けを怖がるような怖さではなく、由緒ある古い教会に足を踏み入れるような感覚になるのだった。

ジョンには目指す場所があった。教会の祭壇のような場所、それは大きなブナの木だった。

栗色の長い髪の少女

ジョンが父親と一緒にこの森に初めて入った時、ブナ木の上に登って、歌うようにつぶやいている少女を見た。

近くの村の少女らしく、ジョンよりも2つぐらい上に見えた。

「こんな大きな木に一人で登れるなんてすごいね」

ジョンは父親に言った。

「そうだね」

父親はジョンと少女を交互に見ていた。

ジョンは少女を見上げながら瞳を輝かせていた。

父親はジョンが少女とお友達になったらいいなと思った。

二人は少女の方に近づこうとすると、二人に気づいた少女は、慌てて木を降りた。

「あの……」

父親は少女に声をかけようとしたが、少女は急いで森の奥の方へ駆けて行ってしまった。

その時から、ジョンの記憶の中に、秋の午後の陽を背中に受けて、栗色の長い髪の少女が焼き付いてしまった。

少年の背後から近づくもの

今日もブナの大木は、いつものように静かに葉を揺らしている。

少女の姿はなかった。

その時、ジョンの後ろで、落ち葉を踏む足音が聞こえた。

ジョンは振り返った。

写真から一場面を想像する方法を実践してみた感想

  • 物語の全体の構成を考えるのは大変だが、一場面だけを想像するのは決して難しくはない。
  • 物語が転がり始めると、登場人物たちが動き始めるような感覚があった。
  • 想像とは言っても、自分の過去の記憶から呼び出した情景の中に登場人物たちはいる。想像した草原や森の情景は私の記憶の中のものだ。
  • これは読み手の側にも言えることで、想像した草原や森は読み手の記憶の中の情景だ。
  • 書き手の想像する情景と、読み手の想像する情景は異なる。それでも共感を求めて書くのが小説なのかと思う。
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