人の心理だけでなく、目の前にあるものを言葉だけで正確に描写することができますか?
AIのgemini老師(AIのgeminiの中で小説の基礎練習の方法を教えて頂いた老作家)が、表現力を鍛える方法として、物を言葉で描写するデッサンの訓練を提案してくれました。
絵画の基礎練習にあるデッサンのように、見た物を言葉を使って詳細に描写する訓練です。
私は、一つのものを徹底的に言葉で描くということを、今までやったことはありませんでした。
実践してみると、言葉だけで描くことの難しさを感じましたが、「言葉で徹底的に描写するとはこういうことか!」という手応えを実感することができました。
身近にあった電卓を言葉でデッサンする方法を実践してみた
パソコンのそばに置いてある電卓をデッサンの題材に決めました。
この電卓は最近100円ショップで買ったものです。200円の電卓と迷った末に300円の電卓を選んだと記憶しています。
描く道具にXmind(マインドマップ)を選ぶ
電卓を文字で描写するのに何を使ったら良いか考えました。ブログに投稿するのでエディターにしようかと思いましたが、マインドマップを使うことにしました。
色んな角度から描くことになると思うので、あれこれ試行錯誤するだろうから、直線的に文字を打ち込んでいくエディターよりも、文章を移動しやすいマインドマップの方が良いと考えました。
文章をブロック毎に移動できるアウトラインプロセッサー(アウトライナー、例えばWorkflowy、dynalist、notionなど)でも良いのですが、全体を見渡す視認性はマインドマップの方が優れているので。今回はXmindを使いました。
6つの視点を決める(客観と主観的視点)
見たままをだらだら書いても駄目だと考えました。最初に視点、どの角度から対象の電卓を見たらよいか決めた方が書きやすいとおもいます。
色々考えた結果、次の6つの視点に決めました。
形状:
物理的な形、大きさ、重さ、色合いなど細かく。
機能:
どんなことができるのか。わかりきったこと以外のことを中心に。
価値:
対象が持つ価値。価格的な価値と主観的価値。
手触り:
対象を触った個人的な感触。
使用感:
対象を操作した個人的な感想。
愛着:
対象に抱いた個人的な思い。
これらの視点を網羅すれば対象の電卓を詳細に描写できるはずです。
この6つの視点は、どうしたら対象を全面的に描けるかを考えて決めた視点ですが、後から見ると客観的視点と主観的視点の両方を含んでいることに気づきました。
視点を分割したことによって、それぞれの視点に集中することができます。
各視点から視覚的にブレインストーミング
絞り出す感覚は一般的なブレインストーミングに似ています。
形状や機能などの客観的視点では、見えるものに漏れがないかに集中します。
だんだん主観的な視点になるに従って、視覚と同時に記憶などを動員して頭の中から絞り出します。
眼の前の対象(電卓)と頭の中の過去の体験の記憶を結び付けながら、漏れがないか、出し切ってないかに集中します。
電卓を観察しながら徹底的に描写してみた
形状 :
全体は縦長な四角い形をしている。 幅は約10.5cm、縦約14cm、厚みは薄いところで約8mm、厚いところで15mmだ。
真横から見ると液晶の部分が見やすいように起き上がっている。 裏返すと直径約10mm厚さ1mmぐらいの突起が4つ出て、これが足の役割を果たしている。
短い4本足の中央に深さ0.5mmぐらいの四角い凹みがある。これは何のためにあるのだろう?ラベルを貼る部分かもしれないが何も貼っていない。
角は丸く処理されている。操作面は白で裏面は黒くなっている。
操作面の上部は細長い液晶画面で、その下には小さな四角い太陽光パネルが金色に光っている。
その他は数字や記号が書かれた押しボタンが整然とならんでいる。
操作面も工夫されていて、一番上には小さなボタンが横に5つ並び、メモリーや平方根、電源OFFを担当している。
その下は横に5列下に4列合計20個のボタンが並んでいる。ここで四則計算や%、消去、電源ONのボタンだ。
一番下には他のボタンより横に細長い=(イコール)のボタンが収まっている。形が大きいのは一番多く押す部分だからだと思う。
おっと、見逃すところだったが、右下の「+」ボタンはイコールボタン程ではな いが、他のボタンより長めで縦に収まっていた。
更に良く見ると、中央寄りにかたまって配置された数字とコンマボタンは左右に 縦に並んだ記号ボタンより一回り大きいことに気がついた。
機能:
私はメモリー機能を使ったことがないから使い方を知らない。使えば便利なのだろうが、使う必要も感じない。
メモリー機能を必要とする人は、頻繁に電卓で計算をしなくてはならない人だろう。商売人とか経理の仕事の人だろう。 おそらくだが、「MRC」はメモリーをクリアーするのだろう。MemoRy Clearに違いない。
「M+」「M-」はメモリーから加減するみたいだが、具体的にどういう使いかをするのかわからない。
私が電卓を買う時(いつも100円ショップだが)に選ぶ決めては、「√」(ルート)ボタンがあるかどうかだ。仕事で四角い断面の対角線の長さを計算する頻度が多いからだ。
「→」ボタンは何だろうと思っていたら、打ち間違いをした時などに、末尾から数字を消していく機能のボタンだった。
「ON」ボタンの中に、「C-CE」という文字も書いてある。何かをClearするのかと思う。具体的にはわからないが、知らなくて困ったことはない。
価値:
この電卓は100円ショップで最近買ったものだが、値段は300円ぐらいだったかと記憶している。 その前に使っていた電卓も同じような値段で、10年近く活躍してくれた。
300円で10年働いてくれるのだから大したものだ。 昔は国産の「カシオ」の電卓が独占状態だったが、今は中国製やベトナムなどの東南アジアで製造されたものがほとんどだ。
電卓も消耗品には違いないが、なんとなく使い捨てとは思いたくない心理がある。 おそらく精密機械の名残を感じさせるからだろう。電子辞書やスマートフォンまではいかないが、電子機器の仲間として特別な感情を抱いてしまう。
手触り:
左手に持ってみると意外と軽い。計ってみたら103gだった。ちなみに私の使っているOPPOのスマートフォンは、カバーを含めて288.5gだったから、この電卓はかなり軽い。
左手の人差し指で液晶の底部を支え、親指は左側の端を押さえ、残りの3本の指で右側の端を押さえると安定する。
左手の指に伝わる滑らかな心地よさの理由は、電卓の底部に施された極小さな凸凹だ。目を近づけなけれ見えない程のキメの細かさだ。
ボタンを押すと、右手の指に軽い反発を感じる。ノートパソコンのキーボードとほとんど同じ感触だ。
使用感:
電卓にはある程度の大きさが必要だ。名刺大ぐらい小さなものもあるが、普段使いには向いていない。おそらく営業の人などが出先で使うためのものだろう。
この電卓は軽いので、置いて使うには片方の手で押さえていないと動いてします。片手に持って使うのが最適だろう。
大きさは大人の手に丁度収まる大きさで、女性にはもうひと回り小さい方が良いと思う。
ボタンを押した時の反応も素早く液晶画面に表示される。前の電卓は強くボタンを押さないと液晶に数字が現れず、計算ミスをすることもあった。
この電卓には「00」ボタンが付いている。このボタンは前の電卓にはなかった。 意外と利用する頻度が高く便利だと感じている。
ボディの角が丸くカットされていて、手にやさしく当たるのがいい。前の電卓は角が丸くなかったので余計にそう感じる。
愛着:
まだ買って日も浅いが、そばにないと探してしまう。 操作面の色合いも気にいっている。白とアイボリーの中間のような色で優しく感 じる。
電卓を言葉でデッサンする方法を実践してみた感想
- 客観だけでも主観だけでも対象の物を描写することはできないと感じました。客観と主観の両方が必要です。
- 観察する物を描写する際、観察する側の主観が入ります。このことは小説を書く際も同じだと思います。何かを小説で描くということは、作者の主観の反映だということがわかりました。
- 今回の場合、「愛着」の視点の描写が少ないのは、私の電卓に対する愛着が少なかったことがわかりました。描く言葉が少ないということは、その物に対する愛着が少ないということです。言葉を吐き出してみて初めて自覚できました。
- どこまで詳細に描写するのか、判断する必要を感じました。虫眼鏡で観察するのか、顕微鏡で覗き込むのか?適度の倍率というのがあるのだろうと思います。小説を書く際も同じでしょう。